ART of book_文庫随想

『アーキテクチャの生態系』_ネット分析は予見はしてはならぬもの……?

文庫本とは一期一会。
書店で「これは!」と思ったときに買っておかないともう二度と巡りあえなくなるかもしれません。実際、20歳の頃に書店に行くたびに「この次に買おう」と思っていた文庫本をようやく手に入れたのは、絶版になっていたこともあって、40歳を過ぎてからでした(もっとも、Amazonでのお取り寄せですけれど)。
そんなわけで、積ん読(つんどく)された文庫本が何冊も家にはあります。基本的には、タイムレスな内容のものばかりなのですが、たまにそうでないものを手にしてしまうことも(基本的に存命の作家のものは読みません。また、発表後少なくとも30年以上の時の淘汰を受けた物しか読まないように以前は心がけていました)。

それがこの一冊。『アーキテクチャの生態系』。
インターネットに関する内容なので、2年前の2015年発刊でも鮮度はかなり落ちているのです。このまま腐らせてしまうのも惜しいので、順番待ちの列のずいぶん後方からピックアップしました。
しかし、よくあることなのですが、文庫化されたのが2015年というだけで、この本が上梓されたのは2008年。鮮度の良し悪しを語ることはもはや無理です。あとは、発酵しはじめていることに望みをかけるしかありません。

閉じられた世界と開かれた世界の明暗

ところで、これまでよく耳にしたにもかかわらず、試したわけでもないのに一度もその領域に踏み込まなかったものがあります。それは、「2ちゃんねる」と「ミクシィ」。このふたつをやっている知り合いはたくさんいましたが、なぜか私の触手は伸びませんでした。生理的に拒絶していたと思われます。
なんとなく肌に合わないと感じていたのには理由があります。開かれるはずのインターネットという世界で、エンクローズされているように感じたのです。島国根性というか、排他的というか……。幼い頃から、父親の転勤のために引っ越しが多かったせいか、その種の空気を読むことだけは、長けていたのかもしれません。
その、なんとなく苦手なイメージが、この本を読んでスッキリと解決しました。やっぱり、このふたつは、極めて日本的なインターネットのアーキテクチャだったのです。つまり、私が流行に乗れなかったということではなかったということが分かり、ひと安心。
しかし、この著者は2008年にこの著書を上梓した段階では、ミクシィが日本には浸透しているということを理由に、Facebookは99%成功しないと断言しています。2017年現在、というか、私が遅ればせながらFacebookを始めた2011年には、もうその答えは出ていました。著者の予見は見事に外れてしまいました。
おそらくこれは、クルマに詳しいジャーナリストが売れるクルマを予見して、多くの場合はずしてしまう現象と似ています。クルマ好きはクルマ好きの見方でしかジャッジできない。いろんな人間の趣向性を多角的に見ることができないことに由来します。つまり、クルマ好きとしては筋が通っているけれど、それは一般の見方ではないということです。
この著者のことはまったく知りませんが(なぜなら、この文庫本はタイトルと表紙デザインで衝動買いしてしまったから)、どうやらアキバ系カルチャーには詳しいのでしょう。ミクシィって、当時の若者はともかく、30代以上の人間にとっては、格段魅力的なものではありませんでした。どちらかというと、ネットに精通したオタク系の人たちにしか受け入れられなかった(と思われ)。しかし、その中にいる人間には、それがすべてだと見えてしまうのです。クルマの最先端技術に常に触れ、各メーカーやインポーターの広報から直接多くの最新情報を得ていたら、いま日本におけるクルマ文化のすべてが分かったつもりになるのも無理はありません。しかし、それを買うのは消費者、しかもクルマにはそれほど興味のない人たちが大半なのです。ミクシィは、オタク系の人やネットに精通した人たちには居心地のよい仮想空間だったのかもしれませんが、ネットにさほど関心のない人間にはまったく響かなったということです。しかし、Facebookは、ネットに関心なくてもスマホを持ってさえいれば、ちょっとやってみようかなという、ツールであったということでしょう。
いまは若者がFacebookをしているとは思いませんが、40歳以上の人にとっては、やはり便利なツールであることは間違いありません。人生をそろそろ振り返る頃になると、かつての友人達と再会したいという思いが芽生えてくるからでしょうか。そんな私も、Facebookを始めた数年で、小学、中学、高校、大学と、各学校での級友達が行方不明だったこの私をネットの世界で見つけ出してくれました。自分のことをデラシネだと思っていたのに、意外と私のことを記憶に留めてくれている人がこの世に存在しているということが、少しうれしく思った瞬間でもありました。Facebook、ありがとう!

さて、インターネットのアーキテクチャは歴史も浅く急速に進化しているため、今日の流行りは、明日の廃れとなるかもしれません。現に、「2ちゃんねる」をいまも続けている人がどれだけいるか知りませんが、前述したように少なくとも「ミクシィ」はもう……。これから先数年間、どのアーキテクチャを信じればいいのか、まったく見当がつきません。

2017年現在、すでに流行遅れであるかもしれないFacebookとInstagramにブログ、そうは分かっていても、すぐにはやめられないよなぁ、と思った一冊。

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