ART of foods_おふとりさま ART of travel_旅艶

イタリアのマンマの味、トルテッリ

フェルッチオの生家をたずねて

傘をさすほどでもない霧雨が降る寒い日に、ボローニャ近くのレナッツォを訪れました。その目的は、ランボルギーニの創設者である、フェルッチオの生家を取材するためでした。

現在、フェルッチオの生家には、彼とはまったく血縁関係のない夫婦が住んでいます。あたたかく迎えてくれたご夫妻は、「どうぞご自由に」と、こころよくフェルッチオの生家の撮影を許してくれました。

生地から手作りのトルテッリ

ガレージと生家の外観の撮影を終えて、いよいよフェルッチオが使っていた部屋へ。その部屋は2階にあるのですが、玄関を入るとすぐ右手にキッチンダイニングの部屋がありました。

ちらりとのぞいてみると、奥さんがパスタ生地をこねています。さすがイタリア。パスタは生地からつくるんだと感心してしまいました。

ふたたび階下に降りてくると、飲み物を勧められました。ジョージ・クルーニーにちょっとだけ似ている旦那さんは、大の話好き。

奥さんは大きなテーブルに布を広げ、広く伸ばしたパスタ生地を小さな矩形にカットして、その1枚1枚に具を詰める作業中。

大きさこそ違えど、その作業は餃子作りに似ているともいえます。

別棟で暮らしている息子夫婦と、別の場所に暮らしている息子夫婦がランチに来る予定になっていて、その準備とのこと。

餃子と違って大きさが小さいので、人数分を用意するには気が遠くなる作業だなぁ、と見ていたのですが、そこは手慣れたもので、みるみるテーブルに並んで行きます。なんどかイタリアのリストランテで食べたことのある見覚えある形状です。

聞くと、「トルテッリ」というパスタらしい。木綿の布の上に並べるのは、余分な水分を取るためでしょうか。並べた後に扇風機で風を送っていました。

コーヒーを頂きながら、陽気な旦那さんの話を聞いていたら、気がつけばお昼時。

「あなたたちの分も作ったから、一緒にランチどう?」と誘われるままに、作りたてのトルテッリをご馳走になりました。

餡はザックリな豚ひき肉。その食感とチーズとの相性も素晴らしく、こんなに美味しいトルテッリは、生まれて初めて。チーズクレーターでかけてくれたパルミジャーノレッジャーノも最高! 感動のあまり、話せもしないイタリア語で「ボーノ!」と「ヴェリッシモ!」を連発。

シンプルゆえに奥深い

ガラスの皿に盛り付けられたトルテッリは、なんの飾り気もありません。味付けも塩味がベース。なんともシンプルな家庭料理ですが、イタリアでこれまで食べたどのリストランテにも引けを取らないおいしさ。

レナッツォあたりでは、各家庭で詰める具のレシピも少しずつ違うそうで、これが日本で云うところのおふくろの味、否、マンマの味なのですね。

二人の息子とそのお嫁さん、そして孫も交えての大人数でのランチ。食卓はさきほどまで奥さんがトルテッリを作っていたテーブルです。その飾らないシンプルな食卓は、笑いと愛に溢れていました。

イタリアのマンマって、恰幅のよい太ったイメージなんですが、それもこんな食卓ならむべなるかな、と思ったおふとりさまでした。

-ART of foods_おふとりさま, ART of travel_旅艶