ART of travel_旅艶

5000円以下で有名建築家のホテルに泊まる

有名な建築家が設計したホテル、泊まってみたいですよね。
新しいところだと隈研吾氏のオリーブベイホテルとか。
古くは、辰野金吾氏が手がけた奈良ホテルとか。
しかし、お値段高そうです。
そこで、お安く有名建築家設計のホテルに泊まることができる宿をご紹介します。
たとえば、黒川紀章氏設計のホテルなんていかがでしょう。
少し前に解体された青山ベルコモンズや、保存に向けて住民もがんばっている中銀カプセルタワービルなどの設計者です。

黒川紀章設計のホテルでございます

最小限ホテルとして、先日、沖縄のホテルをご紹介しましたが、
それはカプセルホテルだろ! と思った人もいることでしょう。
前回のは、バス・トイレ、それにベッドにデスク・チェア、洗面台に冷蔵庫を備えた最小限ホテルということです。
プライベート空間の最小限ホテルといえば、カプセルホテルかもしれません。
その日本初(というか世界初)カプセルホテルを設計したのが、何を隠そう黒川紀章氏なのです。
大阪万博でも数々のパビリオンを手がけた黒川紀章氏なので、カプセルホテルもその頃作品だと思っていましたが、記憶違いでした。
大阪万博で黒川紀章氏の「カプセル住宅」を見たホテル経営者が、黒川氏に相談したのだそう。
1979年に完成。

一度、泊まってみたいと恋い焦がれて、2015年にようやく宿泊することができました。
カプセルホテル経験自体、はじめて。

気分は宇宙ステーション

フロントで受付を済ませて、期待ワクワクで自分の番号のカプセルへ。
予想はしてましたが、実際のそれは想像以上にペットホテルのよう。
丸みを帯びた六角形の入り口は、まるでミツバチの巣。
朝、目が覚めたら、カフカの「変身」ではないけれど、ミツバチの幼虫になっていたりして……。
そんな妄想に耽ってしまえるほどの表現しがたい雰囲気が漂っています。

さっそくディテールチェック

開業当時はブラウン管のテレビだったのでしょうが、それは入れ替えてあります。

そして設備の入れ替えで当時のスイッチ類は用をなさなくなったのか、蓋がしてあります。残念。
スイッチがズラリと並んでいたら、昭和50年代風未来感たっぷりだったのに。

しかし、照明や送風口など、円形でデザインされているところはいいんですよね。
なーんて思っていたら、送風の音が耳障りで、耳栓して寝ることになりました。

ひとつ惜しむらくは、ロールカーテンである点です。
オープン当時の写真とほぼ同じ柄のロールカーテン。
できれば、ここがハッチだったら、しかもドーム状の透明のポリカーボネートだったら申し分なかったのですが……。

建築の寿命、設備の寿命

70年代、80年代のクルマに、インテリアデザインを損ねないように、1DINサイズの最新のオーディオやナビシステムをインストールしたことのある人ならわかると思いますが、
結局はもとのオーディオに戻した方が、当時感が出ていいものです。
コレクションとしてもオリジナルのものが重要視されます。
このカプセルホテルも当時のままをキープしていたら、
ノスタルジー溢れ、本当に素晴らしい経験ができたのにと残念で仕方ありません。
不便であることは承知の上で、オリジナルコンディションで泊まりたかった。
ブラウン管のモニターで、大阪万博の記録映画なんて流れていたら、超最高だったでしょう。

中銀カプセルタワーにも言えることですが、最先端の電化製品などの設備を建築の一部として取り入れると、
建築の寿命よりも、設備の寿命の方が短いので、どうしてもある時点で時代遅れ感が出てしまいます。
それがノスタルジーになるには、さらに時間を要してしまいます。
クルマなら、乗らずに保存してノスタルジーという味が出るまで寝かせておくことができますが、
建築だとなかなかそうはいきません。
ちなみにBMW M1を所有していた黒川氏は、確か、クルマは新車を手に入れてから30年寝かせて、それから乗ると良いというようなことを仰っていたような……(記憶は定かではありません)。

完全オリジナル版、求ム!

そこでひとつ提案です。
オープン当時の姿に再生したカプセルをいくつか用意して、
そのカプセルだけはお値段が2倍であったとしても、需要はかなりあると思います。
(通常お値段は3400円〜と、激安です)
黒川紀章デザイン完全オリジナルのカプセルホテルです。
私だったら、1万円でも泊まってみたい。
ブラウン管のモニターでは、映画を見放題にしてもらえると尚よし。
キューブリックの『2001年宇宙の旅』か、タルコフスキーの『惑星ソラリス』なんか観ながら、このカプセルホテルでひとり、夜を過ごしたいですね。