ART of book_文庫随想

『壊れる日本人 ケータイ・ネット依存症への告別_マトリックスの世界ももうすぐそこですね

eスポーツというものがプロ化されました。
『ストリートファイター』や『鉄拳』という懐かしいタイトルのゲームも、eスポーツのプロライセンスができるようです。

このニュースを観て、いろんなことを考えさせられました。
まず、子供達のなりたい職業の上位に「eスポーツのプロ」がランキングする未来はそう遠くなさそうです。
近年ではキャバクラ嬢になりたいとか、ユーチューバーになりたいとか、記憶に新しいはずです。
そしてどの家庭でも見受けられた親子の会話に変化が現れます。

親:「ゲームばかりしないで、勉強しなさい!」
子:「いま、eスポーツの練習中だよ!」
親:「……」

そう、ゲームすることが、グラウンドでサッカーの練習していることと同レベルになるのです。
子どもがスイミングスクールに通うように、ゲームスクールに通うようになる日も近いかもしれません。

映画『マトリックス』のような未来も近いなー、と恐ろしくもなりました。

柳田邦男さんの『壊れる日本人』どころか、『壊れる人間』と言っていいでしょう。
いまやゲームは世界規模なのですから。
しかも調べてみると、世界でeスポーツとしてプレイされているゲーム、武器を持って殺しあうものが多いようです。
プラレス3四郎のように、リアルとバーチャルが渾然となっているのなら面白いなとも思いますが、
バーチャルの世界で銃を持って殺し合って競うというのは、あまりにも恐ろしい気がします。
オリンピックで、山下選手の怪我をした足を攻めなかったことで賞賛された柔道選手がいました。
しかし、eスポーツではプレーヤーが指を怪我していたからといって、バーチャルのゲームの世界で手加減してくれるのでしょうか。
(というか、通信で対戦するのですから、生身の相手の健康状態など知るよしもなく、知る必要もないのでしょう)
この場合、eスポーツのスポーツマンシップって、どんなことを指すのでしょう?
(ゲームはファミコンの前に卒業したので、残念ながら分かりません)

「……テレビゲームに毎日熱中している子どもは前頭葉の発達がゆがめられ、正常な人格形成が阻害されるという、いわゆる「ゲーム脳」の問題だ。(中略)社会生活の経験が少なく、情報への批判力もない子どもが、毎日長時間テレビを見たりゲームにふけったりしていると、その子にとっては、仮想現実の世界と現実の世界の区別がつかなくなるばかりか、やがて仮想現実の世界のほうに現実味を感じるという逆転現象が起きてくる。(中略)若い女の子が電車にかけこむや、座席に座ってくつ下をはきかえたり、おむすびを食べたりする。それは、モラルの恥じらいがないというより、脳が仮想現実の世界から抜け出していない、つまり自宅のソファーでテレビを見ているのと同じ感覚で電車に乗っているからだととらえたほうが納得できる行動だ」

電車通勤するようになって、スマホでゲームしている大人によく出くわします。
ガッツリと化粧を始める女性や、コンビニ袋からやおら菓子パンを取り出して食べ始める女性が本当に実在することも知りました。
確かに、モラルの恥じらいを感じているようには見えませんでした。

星新一氏の『ボタン星からの贈り物』というショートショートをなぜか思い出していました。
eスポーツのプロ化は、ボタン星からではなく、もっと身近な為政者や資本家からの贈り物かもしれないと思った一冊。

『壊れる日本人 ケータイ・ネット依存症への告別:柳田邦男/新潮社文庫』