ART of travel_旅艶

ウィンドウ・シンキング

開店前のショーウインドウを見ながら、さまざまなことを思い耽る

ミラノには何度も宿泊したことがあるけれども、
記憶は、クルマで運転するアウトストラーダにのるまでの道のりばかり。

それもそのはず、夜おそくホテルにチェックインして、朝早く取材に旅立つから。
コーディネーターのNさんが予約してくれているホテルが、ミラノの中心地にあることすら、ずっと知らずにいたくらい。

しかし、今回はじめて、自分の足でミラノを散策することに。
ホテルのロビーには、9時にNさんがお迎えに来ます。
陽が昇りはじめる7時からの2時間弱、それがお散歩に与えられた時間。
ドゥーモまでは20分ほどで行ける距離。
これは行かない理由が見当たりません。

早起きして、パッキングもほぼ済ませて、カメラを片手に7時過ぎ部屋をあとに。
昨晩チェックインしたときにいたフロントの男性に、9時までに戻ると伝えて、冷たい空気の戸外へ。

ようやくあたりは明るくなりはじめる時間。
まだお店が開店する前。
この時間帯に知らない街を歩くのが、何を隠そう大好きなのです。

常宿としているホテルから、電車の通る道を渡ると、ウェディングドレスが飾られたショーウィンドウがあることに以前から気がついていました。

はじめて、ゆっくりとそのショーウィンドウを眺めて、心に引っ掛かっていた理由が解けました。

ウエディングドレス=女性の結婚の象徴。

このショーウィンドウ越しに見ると、花嫁は檻に閉じ込められているようです。

女性にとって結婚は監獄に入るようなもの。
自由を失うこと。

はたして、ほんとうにそうなのかな? なんてことを、自分の妻の立場に立って考えてみたり。

ホテルを出て、たった数十メートル歩いただけで、こんな調子なので、ドゥーモはとても遠い……。

アンティークのシンガーミシンを眺めては、亡くなった祖母が使っていた足踏みミシンで遊んでいた頃へタイムスリップ。

ジェラードの減り方ひとつとっても、なにかを示唆しているように思えたり。

まだ、お店が開店する前のショーウィンドウを眺めるのは、ちょっと哲学的なのです。

ウィンドウ・ショッピングも経済的ですが、ウィンドウ・シンキングも同じく経済的、です、たぶん。