ART of cycling_二輪書

旅するBD-1、東海道五十三次を行く◎48_坂下(筆捨山)

BD-1で走破した、東海道五十三次の旅の記録。2018年3月23日〜28日の4泊5日をかけたポタリングの様子を宿場ごとにレポートしています。

DAY 5 9:50_坂下宿(筆捨山)

2018.3.27

観光地をコラージュした浮世絵ポイント

草津まで48km!

東海道五十三次旧道で、最大の難所は箱根越えでしょう。そのあと、急坂をいくつも越えてきましたが、鈴鹿峠がゴール前の最大の難所だと思っていました。
 
関宿も東から西へは、いうなればずっと上り坂です。その関宿を抜け1号線に合流すると、景色はいよいよ峠越えの様相に一変します。

左車線は路肩しかなく歩道がありません。キコキコゆっくり上っていくには、トラックなどの交通量が多すぎて身に危険を感じたので、右側車線の安全な誰一人として歩いていない歩道を上っていきます。

2kmほど走ると、車で走っていたらまず気が付かずに見落としてしまう、右から国道1号線に出ている小径に出くわします。この小径がどうやら東海道旧道のようです。

東海道旧道は、ちょっとだけ1号線から迂回します。

ふらふらとその小径へ曲がると、亀山市教育委員会が立てた東海道の案内板がありました。ここが浮世絵ポイントの筆捨山です。

筆捨山を紹介する看板も設置されているので間違いありません。

案内板には筆捨山の名の由来が記されています。それによると、室町時代の画家狩野法眼元信が訪れた際、ここで山を描いたのですが描き終えず、翌日改めて続きを描こうとしたところ、雲や霞が立ち籠めていたために山の姿が変わってしまって描くことができずに、諦めて筆を投げ捨てたところからこの名がついたのだとか。

別の書物によると、あまりに素晴らしい景色に絵師も筆を捨ててその景観を眺めていたため、とも。

絵かきが天候が悪くて自分の筆を捨てるなんてこと、にわかには信じがたいのですが、さりとて筆を捨てるほど素晴らしい景観かと言われると……。

いずれにしても江戸時代には名勝として知られた場所で、茶屋から四季折々の景色を楽しんだらしいことは、坂下宿の浮世絵にこの筆捨山が描かれていることからも本当のようです。

ということで、国道1号線からルートを逸れて筆捨山を見てみようと思ったのですが、いまは茶屋のかわりに民家がぽつんとあって、いうなればその民家が使う私道のような道なのでした。

浮世絵のような景色もなく、そのかわり山羊の姿に癒やされたのでした。

風光明媚な景色ではなく、山羊の姿に癒やされました。

ついでにいうと、浮世絵に描かれている滝も実際にはなく、どうやらこの先の岩屋観音の清滝のイメージが添えられているらしい……。

いまでもこうした観光地のポスターはたくさんあります。コラージュという手法です。

この東海道旧道は数十メートルの弧を描いてすぐに国道1号線に戻ります。

日本橋からの旅路を思い出すモニュメント

東海道旧道はここを右折します。

国道1号線に戻って鈴鹿川を眼下にしながら400m少し進むと、トラックの往来が多い国道1号線とさよならして東海道旧道へ。

明るい時間帯は、こうした旧道をのんびり走るのがやっぱり気持ちいい。1.5kmほど上っていくと、さらに細い道が右に見えてきます。道の左側には木の柱が等間隔に並び、右側は石垣です。

東海道の起点、日本橋の文字を久しぶりに見ました。

木の柱には「日本橋」の文字。どうやら東海道の宿場の数だけ木柱が立てられているようです。

ちょうど「興津」のところまで坂を登ると、右手にかつての小学校の校舎と校庭が見えてきます。ここが鈴鹿峠自然の家。

こんな自然の家なら、大人になったいまキャンプ、BBQに使ってみたい。

そして左に目をやると、多面体のホールが特徴的な鈴鹿馬子唄会館。建物の姿と建てられている立地とを鑑みると、バブル期前後の施設のよう。後ほど調べてみると1995年竣工でした。

残念ながら写真は撮り忘れました。というか、旧小学校の鈴鹿自然の家のほうに完全に興味が向いてしまって、現場ではシャッターを押したくなるほど心のセンサーにひっかからなかったのです。

ここまで東海道を走ってきて、同じように宿場を順番に辿ることができるモニュメントをいくつも見てきましたが、たいていは浮世絵をモチーフにしてレリーフや看板にしたものでした。ここまで抽象的かつシンプルなものははじめて。

等間隔にきれいに並んだ宿場名を書いたモニュメント。

しかも道路と鈴鹿馬子唄会館の敷地とをオープンに区切るという役割も担っているようです。日本橋から5日かけて旅してくると、ひとつひとつの宿場名がしっかりと景色として蘇ってきて、最後の難所(とその時は思っていた)に向けて心改まる思いでした。

最終日の朝に旅のすべてを思い出させ、最後の宿場に思いを馳せる170mのちょっといい旧道でした。

注:〈  〉内は交差点名を表します。


●GoProからの1枚

途中、寄り道をして鈴鹿川に足を浸してみました。まだ水は冷たくて、すぐに退散。

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