ART of book_文庫随想

『見るということ_SNSは写真が命!』

ありがとう青山ブックセンター

大学を出て、最初に就職した映像制作会社は六本木にありました。
その後、初めて就職した出版社も六本木にありました。
まだ、防衛庁があったころです。

学生の頃、遊ぶために訪れていた六本木に、働くために何年か通ったのは、ちょっといい思い出です。

六本木に通わなくなって、気がつくと六本木交差点にあった誠志堂書店がなくなっていました。
これはちょっとショックな出来事でした。

しかし、いつも心のオアシスだった青山ブックセンターがあるから大丈夫……と、ついこの間まで思っていました。

青山ブックセンターは、映画、建築、美術、写真……と、関連の書籍や写真集がとても豊富でした。
写真集を見るために、図書館代わりに使ったこともあります(ゴメンナサイ)。

一番素晴らしかったのは、そうしたジャンルで文庫本も充実していたことです。
この場所で、いろんな文庫本との出会いがありました。(もちろん、文庫本は購入しました)。
作家別ではなくて、きちんと版元別に文庫本を並べている点もよかった。
岩波文庫、ちくま文庫、河出書房、講談社学術文庫……。
興味が湧くと、しばらくは同じ版元の文庫ばかりを手に取ってしまう自分には、とてもありがたいのです。
また、新刊ではなく書店がオススメする既刊の文庫で、知らない世界に触れることも多々ありました。

いまでも、六本木に用事があるときは立ち寄って、ココロに刺激を与える場所として使っている(いた)本屋です。

その青山ブックセンターが、閉店することに……。
そんなニュースを聞き、打ち合わせの後に立ち寄ってみました。

そして青山ブックセンターとの最後の思い出として、選んだのがこの文庫本。
(ついでに、LAMYの限定ブラックのローラーボールも買い足してしまいました)。

芸術系の文庫本が充実しているところは少ないので、青山ブックセンターがなくなるのは、個人的に痛手です。
出版不況と云われて久しいですが、「ABCよ、おまえもか!」という気分です。

最後の記念に、青山ブックセンターの外観をコンデジでパチリ。
よし、この写真をFacebookにアップしよう。
「悲報! ABCが閉店することに」とでも書き添えて。

SNSを予見した書

Facebookと云えば、『見るということ』のなかで、ジョン・バージャーは次のように書いています。
1978年に書かれたものです。

何かを思い出すときには色々な働きかけが絡まってくる。思い出された事が終着点なのではない。多くの働きかけや刺激がそこに収束し、そこへと導いていく。さまざまな言葉、比較、記号が、写真の文脈を創り出すのに必要である。多様な働きかけに注意を払い、道を開く必要がある。革新的なシステムが写真のために創られなければならない。それは、私的であると同時に政治的であり、経済的であり、ドラマティックであり、日常であると同時に歴史的でもあるだろう。

まるでFacebookやInstagramといった、SNSを予見しているような一文。

そこで、FacebookにInstagram、それにブログ……などなど、やっぱり写真が命なんだなと感じ入った1冊。

『見るということ』ジョン・バージャー/ちくま文庫

モノトーンで美しいカバー。
オールブラックのラミーサファリ。
30年以上待ち続けてようやく出たカラー。

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